1971年のアメリカ映画『栄光のル・マン』はガルフの名を世界に広めた記念すべき作品。この映画の印象を尋ねると、多くの観客はおそらくポルシェ917、ブルーとオレンジのガルフカラー、そしてスティーブ・マックイーンと答えるはず。 もし観たことがなければ、今すぐレンタルビデオ店に走ることをおすすめする。
フランス西部、パリから西南に約200キロのところにある古い小さな町、ル・マン。人口10万人のその静かな町が6月なかばのある日、突如30万人に膨れ上がる世界最大のオートレース“ル・マン24時間レース”の幕が切って落とされる日なのだ。
この映画は、自らもレーサーとして活躍していたスティーブ・マックイーンが主演。“ル・マン24時間レース”の栄光に賭けるレーサーたちの愛と孤独をドキュメンタリー・タッチの映像でとらえた超大作である。
俳優としてのキャリアと、レースへの情熱のすべてをこの映画に注ぎ込んだマックイーンは、自分の主宰するソーラー・プロの総力を挙げて1970年6月、実際のレースを皮切りにクランク・イン。撮影は約5カ月間にも及んだ。使用したカメラ計90台。撮影に使ったマシンはポルシェ、フェラーリなど含め25台。レースを忠実に再現するために集められたレーサーは、第38回のル・マン優勝者リチャード・アトウッドをはじめ世界トップクラスのプロ56名。マックイーンがいかにこの映画に賭けていたか、これらの数字だけても容易に計り知ることができよう。さらにレース本番に出場したポルシェ908にも3台のカメラを積み込んで、全コースを疾走しながら撮影するという離れ業までやってのけた(このポルシェは8位に入賞している)。直線を350キロで走る臨場感やエンジンがうなり声をあけて疾駆するリアリティを実現させた裏には、こんな逸話も隠されていたのだ。
マックイーンはかなりの完全主義者だったため事実上、製作、脚本、監督そして主演の4役を兼ねているほか、ドライバーとしてもタイトルに名を連ねている。
(映画『栄光のル・マン』パンフレットより抜粋)